Classici giapponesi con furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Leggi 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 57.666 caratteri · 114 schermate
然し其後も会うところは相変らず古本屋の店先で、談話は古書に関することばかりであったので、昭和七年の夏、偶然銀座通で邂逅した際には、わたくしは意外の地で意外な人を見たような気がした為、其夜は立談をしたまま別れたくらいであった。
わたくしは昭和二三年のころから丁度其時分まで一時全く銀座からは遠のいていたのであったが、夜眠られない病気が年と共に烈しくなった事や、自炊に便利な食料品を買う事や、また夏中は隣家のラディオを聞かないようにする事や、それ等のためにまたしても銀座へ出かけはじめたのであるが、新聞と雑誌との筆誅を恐れて、裏通を歩くにも人目を忍び、向の方から頭髪を振乱した男が折革包をぶら下げたり新聞雑誌を抱えたりして歩いて来るのを見ると、横町へ曲ったり電柱のかげにかくれたりしていた。
帚葉翁はいつも白足袋に日光下駄をはいていた。其風采を一見しても直に現代人でない事が知られる。それ故、わたくしが現代文士を忌み恐れている理由をも説くに及ばずして翁は能く之を察していた。わたくしが表通のカフエーに行くことを避けている事情をも、翁はこれを知っていた。一夜翁がわたくしを案内して、西銀座の裏通にあって、殆ど客の居ない万茶亭という喫茶店へつれて行き、当分その処を会合処にしようと言ったのも、わたくしの事情を知っていた故であった