Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Leggi 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) di 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 151.120 caratteri · 302 schermate

Aozora Bunko

自分の、この研究所に於いての仕事というものに、ここで終止符を打たれたような、何んともいえぬ落莫たる気持であった。

しかし流石に、石井みち子を前に置いて、ひどく取乱したところを見せぬだけは、やっと落着きを持ちこたえていた。いや実は相当顔にも出ていたのであろうが、突然「ボルネオに行く」と申し渡されて昂奮に取りつかれていたみち子に、ただ気づかれぬだけだったのかも知れない――。そして木曾は、あの親友僚一によく似た貌立ちのみち子が、いつになく上気した顔を真正面に向けているのを見ると、却って、やっと自然に微笑が浮ぶほど、落着きを取り戻して来た。

「木曾さん、所長が呼んでますよ――」

遽だしくはいって来た助手の村尾健治が、ドアーを開けながら、いつになく弾んだ声でいった。

「ああ、そう――。村尾君もボルネオ行きだったね」

「はあ、お蔭様で……」

村尾もまた、どう怺えても込上って来てしまうらしい微笑を、口のへりに顫わせていた。

「まあ、しっかりやってくれたまえよ、石井さんも行くんだ、よろしく頼むよ」

「はあ、あの……」

「はっは」

木曾は、笑った自分の頬が、ひくりと痙攣したのであわてて立上った。