Classici giapponesi con furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Leggi 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) di 室生 犀星 (むろうさいせい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 105.794 caratteri · 211 schermate
」
「唯今はもう就寝にございますゆえ、誰も蔀のそばには出てはおられませぬ。いまのうちに早く。」
「登り申すぞ。」
「心置きなく気をつけて?」
持彦にとっては帯につかまり、足を板わくに置いてのぼることは、何の苦にもならなかった。半ば登りかけたときに、持彦が沓をわすれたことを花桐は知った。夜まわりが廻って来ると、すぐ沓がわかる位置におかれてあったからだ。
「持彦さま、お沓を……」
「これは慮外であった。」
持彦はふたたび下りると、沓を帯に結びつけた。それを上からするするとたぐり上げた。持彦は一瞬のうちに倉の階上におしあがった。
「暗うございますが眼がなれてまいりますと、何も彼も針も見えるように相成ります。」
「悲しい目にあわせ申した。我らも流罪の監視でよう出られ申さぬ。しかし、それが何のさまたげがござろう。も、そっと近くに。」
「はい。」
「ようようお身の顔が見え申して来た。夜が明けかかるようにしだいにはっきりしてまいる。」
この薄ぐらい倉の中では、花桐の顔の白さだけがあかるい明りだった。その顔明りはふしぎにあたりの机の上にも、上敷にも、そして窓の外の薄月のひかりさえ誘いいれているようなものだった。