Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.638 caratteri · 233 schermate
吉野の奥はまだ雪とやら、ぜひもないが、追捕のもう一歩では、南朝がたの君臣を、このさい一挙に捕えることもできたろうに」
と、それだけは画龍に点睛を欠いたものと嘆じるのだった。
「……いや何とも」
と、師直は、あたまをたたいて、あやまった。
不案内な山地の苦戦とか、兵糧の欠乏とか、そんな平凡ないいわけに、努めたあとで「しかし――」と、彼はまた、彼らしく陳弁した。
「その賀名生と申す地は、まったく猿しか住まぬような山奥の極みでおざる。さような人外境より、俄に再起をはかるなどは、もはや思いもよらぬこと。されば吉野朝廷の名も実も、はやなきにひとしいものと見てよろしいかと存じまする」
「む、む」
そうには違いないと尊氏も思った。師直はいうまでもなく、もっとそれを確信した。
しかし、これははなはだしい誤算だった。
そのご、賀名生の南朝方は、意外にはやく瀕死の頽勢をもりかえしてきたのである。
しかもなお皮肉なのは、その原因が、勝者の側から瀕死の敵へ、起死回生のよろこびと絶好なすきとを与えていたことにある。――すなわち、足利方の内訌がそれで、直義と師直との軋轢は、両者の凱旋を機としていよいよ激化し出して来たかの様相がこの春は一ばい濃かった。