Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.638 caratteri · 233 schermate
そしてその命松丸は、
「なむあみだぶつ……。ああ、お師匠さんはえらかったな。一代、こんな世の中だったが人も害めず自分も殺さず、けっこう毎日を楽しんで暮しなすった。修羅六道の地獄の世を、あの深い目で見物しに生れてきたようなお人だったが。……もうあの意地のわるげな笑い顔、慈悲と憐れみを交ぜた皮肉なおことば、そしていつも権力気狂いの人間たちを哀しんでいるようなおすがたも、ふっと、どこにも見えなくなったのだ。ああ、淋しい」
と、また元の孤児に返って、師のあとを、飄とうらぶれ歩いているにはちがいなかろう。
ずっと後のことになるが。
この命松丸に行き会った今川了俊が、
「なにか兼好のかたみでも残っていないか。あの法師のことだ。書き残した物でもあれば、それはさぞ面白かろうに」
と、訊ねたところ、命松丸はそれに答えて。
「はい、お師匠さまは、筆まめではいらっしゃいましたが、一つも世に残そうなんていうおつもりはなかったようで、反古はそばから紙衣や何かに使ってしまい、残っている物といえば、旧の草庵の壁やら襖紙に貼った古反古があるぐらいでしかございませぬ」
「ほうそれだけでもそれは見つけものだ。