Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.638 caratteri · 233 schermate
軍にかけ謀にかけ、始終、あの一禅門には抗しえぬ威圧感と翻弄の受け身におかれていた。何よりもその親房には、学識と思想があり、武力に理論づけ、武士を思想の下に統御していた。自分には、それがない。
また、いつも親房の手のこまかさには、奔命に疲らせられた。直義と師直との衝突も、それいらいの直義の変り方も、なお先頃、義詮と自分とを遠くに分離して、東西、個々に撃とうとした計なども、みな親房の方寸から出ていたものだ。
そして、それとはこっちも看破って親房のウラを掻くつもりでは、またいつも尊氏は、自身を泥沼にのたうってしまう破目をまぬがれなかったものである。――だのに、その恐ろしい人物もいまは南朝方にいなくなったと知ると、彼は、その強敵を敵として、無残にまでつよく自己を生かして来た大きな張りを失っていた。淋しさに似る虚の下から、
「……死んだか」
と一言、つぶやいた尊氏だった。
尊氏はしかし、以後はなお繁忙だった。
南朝方では一時、愁然としていたものの、決して戦意は沮喪してはいなかった。九州の菊池党は、健在であり、いちどもその初志を変えていない。征西ノ宮将軍(懐良親王)の旗幟は筑紫を圧している。