Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.638 caratteri · 233 schermate
けれどもまた、どう憤っても、
「不逞な子!」
とは本心で罵れなかった。不逞な父は自分かもしれないのだ。
彼は焦々する。
相手は自己の分身にひとしいものだ。それへの憎しみは自分を憎むことでもある。だから骨肉の憎しみ合いは他人の比でない深度と非人間性を持つ。すでに尊氏はもうそんな愛憎本能など無性に七面倒くさくなっていた。憎悪一本になっている。むらと、胸の毒焔を声に吐いて、左右へ令をくだしていた。
「今夕から総がかりをかけて、あの有頂天な痴者どもを、ひとり残らず洛中から追ッ払え」
これが三月十二日である。
しかし洛中の合戦は、二十一日までかかった。
相互、血みどろをきわめ、この時も見さかいなく民家や寺院を双方で焼いた。
その間には、播磨の斑鳩から急進してきた義詮の軍も尊氏をたすけ、佐殿方は木ッ端みじんに破れてしまった。そして当の直冬は、敗走に敗走をつづけ、どこへ落ちのびて行ったのか、これ以後は、まったくその居る所すらわからなかった。安芸にいるともいわれ、石見に隠れたままだともいわれたが、ついにその生涯も分明せずに終っている。
ともあれ、京都はそれ以降、ややおちついた。