Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.638 caratteri · 233 schermate
そして読みおわると、ほっと、凄愴な面色を醒まして、先帝の霊壇に、また長いこと黙拝してしずかに退がった。
後世の水戸学者は、これを評して「彼の狡奸だ」といった。また「耳を掩って鈴を盗む類の芝居だ」と酷評した。しかり、どんな人間も、純一無垢な涙にはなりきれない。だがまた、どんな人物にしろ、一片の真情もないものとはなお言いきれまい。
こんな時、巷ではきまって、物の怨霊をいいはやした。
とつぜん、雷が鳴ッたといっては、冬なのに、ただごとでないと言い、夜は夜で、
「ごらん、南の方に不気味な星が見えるよ」
と、人群れが辻に絶えない。
みな吉野の先帝の怨霊に違いないと恐れおののいているのである。一般の怨霊思想は、まだ根ぶかく、大塔ノ宮のときにも、怨霊怨霊と、言い騒がれたが、こんどもまた、公卿たちの間にさえ、保元の乱に讃岐の配所で憤死された崇徳上皇の怨念や因果などが、何かにつけ想起されていたものらしく、
諸事、崇徳の例に倣う
として、北朝の君臣までひどく気に病んでいるふうだった。そしてそれが、都の昨今を、なんともつかぬ、おもくるしい空気にしていた。
そうした或る朝のことだ。