Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

ききがきしょう

聞書抄

谷崎 潤一郎

Leggi 聞書抄 (ききがきしょう) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 108.821 caratteri · 210 schermate

Aozora Bunko

そう云う父は娘の眼にも一箇の「英雄」と映るばかりで、情愛よりはむしろ畏敬を感じなかったか。さればその父の敗戦を無念に思い、無事に助かっていてくれることを祈りはするものゝ、母が死んだ今となっては、再挙の時を待つ楽しみもなかったかも知れぬ。父がもう一度世に現れて、再び大名の富と権勢とを回復し、焼け落ちた城を又もとのように築き直してくれることは、父のためには此の上もなく望ましいけれども、彼女にしてみれば母のいない城の生活に何の未練があろうとも思えぬ。

挿絵

娘の心は大方そうもあったろうかと察せられるが、乳母の勧める言葉もあり、父が果して助かったかどうかを見とゞけるだけは見とゞけてと、小さな胸にとつおいつ考えあぐみながら、都へ伴われて行ったのであろう。そうして此の二人も豊内記がしるす隼人正と同じように、九月下旬の夜寒の風にふるえながら、往還の人の眼に怯えながら、勝ち誇った関東方の軍勢や落ち行く敗兵の群がる街道を、幾日かかゝって上ったのであろう。たゞ隼人正よりも仕合わせなことには、乳母はあの後見の男のような不実な者ではなかったと見えて、或る町人の知る辺の家へ安全に連れ込んでくれたのであった。