Classici giapponesi con furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Leggi 蓼喰う虫 (たでくうむし) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 110.066 caratteri · 216 schermate
と、老人もすすめればお久も口を添えたので、この間の文楽座の印象もあり、その淡路浄瑠璃につい好奇心が動いたのであった。「まあ、酔興ね、それじゃあなたも順礼の支度をなすったらどう」と、美佐子は眉をひそめたが、可憐なお久が伊賀越の芝居のお谷のようないじらしい姿になるさまを想うと、それと一緒に御詠歌をうたって鈴を振りながら旅をしようという老人の道楽が、ちょっと羨ましくないこともなかった。聞けば大阪の通人なぞのあいだでは、好きな芸者を道連れに仕立てて、毎年淡路の島めぐりをする者が珍しくないと云う。そして老人も今年を皮切りにこれから年々つづけると云って、日に焼けるのを恐れているお久とは反対にひどく乗り気になっているのであった。
「何とか云いましたね、今の文句は?『一と夜をあかす八軒家』か。―――その八軒家と云うのは何処にあるんです」
べっこう色の水牛の撥を畳の上にお久が置いたとき、老人は宿の浴衣の上へ、五月と云うのに藍微塵の葛織の袷羽織を引っかけて、とろ火にかけてある錫の徳利にさわってみては、例の朱塗りの杯を前に、気長に酒のあたたまるのを待っていたが、
「成る程、要さんは江戸っ児だから八軒家は知らないだろう」