Classici giapponesi con furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Leggi 蓼喰う虫 (たでくうむし) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 110.066 caratteri · 216 schermate
「醤油」「油」などと記した文字の消えかかっている欅の看板、土間の突きあたりに吊ってある屋号を染め抜いた紺暖簾、―――老人の云いぐさではないけれども、そう云うものはどんなに日本の古い町に情趣を与えているか知れない。要は青空をうしろにして白く冴えている壁の色に、しみじみ心が吸い取られるような気がした。それはあたかもお久の腰に巻かれている繻珍の帯と同じことだ。澄んだ海辺の空気の中で長いあいだ風雨に曝され、自然につやを消された色である。ほっかりと明るく、花やかでありながら渋みがあって、じっと見ていると胸が安まるようになる。
「こう云う昔風の家は奥が真っ暗で、格子の向うに何があるやらまるで分りませんね」
「一つは往来が明る過ぎるんだね、この辺の土はこの通り白ッちゃけているから。………」
ふと要は、ああ云う暗い家の奥の暖簾のかげで日を暮らしていた昔の人の面ざしを偲んだ。そう云えばああ云う所にこそ、文楽の人形のような顔立ちを持った人たちが住み、あの人形芝居のような生活をしていたのであろう。どんどろの芝居に出て来るお弓、阿波の十郎兵衛、順礼のお鶴、――などと云うのが生きていた世界はきっとこう云う町だったであろう。