Classici giapponesi con furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Leggi 蓼喰う虫 (たでくうむし) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 110.066 caratteri · 216 schermate
「いらっしゃいまし、この鞄は?―――」
「今船から上ったんだ」
「どちらへ?」
「二三日淡路へ行って来た。―――いるかい、ルイズは?」
「まだ寝てるかも知れませんよ」
「おかみさんは?」
「おります、彼処に。―――」
ボーイの指さす廊下の突きあたりの、裏庭へ下りる階段のところに、此方へ背中を向けたままミセス・ブレントは腰かけていた。いつもは声を聞きつけると、二十三四貫はありそうな太った体をもてあつかいながら、ずしりずしり二階を降りて来て、おあいその一つも云うのであるのに、今日はどうしたのか振り向きもしないで庭を見ている。開港当時に建てられたかと思われる、天井の高い、ひっそりと暗い、間取りのゆったりした家で、昔は立派な洋館だったのに違いないのが、久しく手入れをしないままに化け物屋敷のように荒れているけれど、廊下から見るとその雑草の生い茂った裏庭にも五月の青葉の明るさが充ちて、逆光線を受けているかみさんの灰色のちぢれ毛を、一とすじ二たすじ銀色に透き徹らせている。
「どうしたんだい、おかみさんは? 彼処で何を見てるんだい?」
「へえ、今日は機嫌が悪ござんしてね、さっきから泣いているんですよ」