Classici giapponesi con furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Leggi 蓼喰う虫 (たでくうむし) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 110.066 caratteri · 216 schermate
要ははじめ、彼女の言葉を信じさせられていた頃には、今の日本の青年たちが大概そうであるように、その西欧の生れであると云うことに或る特別な幻想とあこがれとを抱いていた。思うにこの女のいいところは、そんなお客の心理を心得て、常に注意してその肌の生地を見せないことと、そうしていれば彼女のうそがほんとうとして通用する程度の姿態を持っていることにあるので、要も実は、その浅黒い皮膚の色には今以て魅惑を感じながら、たとい人工的であっても矢張白皙の肉体が醸す幻想を破りたくないような気がして、ついぞ一度もそのお白粉を剥がさせたことはなかったのである。彼の頭には「巴里へ行ってもこの女なら相当に蹈める」と云った友達の評価が案外深く記憶されていた。彼は車に揺られながらまだ移り香がかすかに残っている右のてのひらの匂いを嗅いだ。そのたなごころに沁み着いたのは、どう云う訳か風呂から上った最後までも匂っているので、この頃はわざとそこだけ洗わないようにして、なまめかしい秘密を手の中へ握って帰るのであった。
「今度こそほんとうにこれっきりだろうか、もう二度と行かずにいられるだろうか」
と、彼はそんなことを考えてもみた。