Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
とうじゅうろうのこい
藤十郎の恋・恩讐の彼方に
菊池 寛
Leggi 藤十郎の恋・恩讐の彼方に (とうじゅうろうのこい) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.146 caratteri · 74 schermate
必死の覚悟を定めたらしいお梶は、火のような瞳で、男の顔を一目見ると、いきなり傍の絹行燈の灯を、フッと吹き消してしまった。
恐ろしい沈黙が、其処にあった。
お梶は、身体中の毛髪が悉く逆立つような恐ろしさと、身体中の血潮が悉く湧き立つような情熱とで、男の近寄るのを待っていた。が、男の苦しそうな息遣いが、聞えるばかりで、相手は身動きもしないようであった。お梶も居竦んだまま、身体をわなわなと顫わせているばかりであった。
突如、藤十郎の立ち上る気勢がした。お梶は、今こそと覚悟を定めていた。が、男はお梶の傍を、影のようにすりぬけると、灯のない闇を、手探りに廊下へ出たかと思うと、母屋の灯影を目的に獣のように、足速く走り去ってしまったのである。
×
闇の中に取残されたお梶は、人間の女性が受けた最も皮肉な残酷な辱しめを受けて、闇の中に石のように、突立っていた。
悪戯としては、命取りの悪戯であった。侮辱としては、この世に二つとはあるまじい侮辱であった。が、お梶は、藤十郎からこれ程の悪戯や侮辱を受くる理由を、どうしても考え出せないのに苦しんだ。それと共に、この恐ろしい誘惑の為に、自分の操を捨てようとした――否、殆ど捨ててしまった罪の恐ろしさに、彼女は腸をずたずたに切られるようであった。