Classici giapponesi con furigana
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とうじゅうろうのこい
藤十郎の恋・恩讐の彼方に
菊池 寛
Leggi 藤十郎の恋・恩讐の彼方に (とうじゅうろうのこい) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.146 caratteri · 74 schermate
と、艶めいた京の女達は、こう云い添えた。
こうした噂までが、愈が上に、この狂言の人気を唆った。
来る日も、来る日も、潮のような見物が明け方から万太夫座の周囲に渦を巻いていた。
弥生の半ばであったろう。或朝、万太夫座の道具方が、楽屋の片隅の梁に、縊れて死んだ中年の女を見出した。それは、紛れもなく宗清の女房お梶であった。お梶は、宗清とは屋続きの万太夫座に忍び入って、其処を最期の死場所と定めたのである。その死因に就ても、京童は色々に、口性ない噂を立てた。が誰人も藤十郎の偽りの恋の相手が、貞淑の聞え高いお梶だとは思いも及ばなかった。
ただ、お梶の死を聴いた藤十郎は、雷に打たれたように色を易えた。が彼は心の中で、
『藤十郎の芸の為には、一人や二人の女の命は』と、幾度も力強く繰り返した。が、そう繰り返してみたものの、彼の心に出来た目に見えぬ深手は、折にふれ、時にふれ彼を苛まずにはいなかった。
お梶が、楽屋で縊れた事までが、万太夫座の人気を培った。
お梶が、死んで以来、藤十郎の茂右衛門の芸は、愈々冴えて行った。彼の瞳は、人妻を奪う罪深い男の苦悩を、ありありと刻んでいた。