Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きんろう

金狼

久生 十蘭

Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate

Aozora Bunko

顔も辞令もすこし美しすぎるよ、こいつのは……。要するに得体の知れない人物さ。……だが、いまに化の皮がはげる。……こんな風にすましてると、いかにも愚直らしいが、この眼だけは胡魔化せない。そういえば、なるほど岡っ引の眼のようにも見える。……が、しかし……」

階段がミシリと鳴る。乾は腰を浮かせて、キッとそのほうへふりかえる。鼠がひどい音をたてて天井裏を駈けていった。

「ふん、鼠か……」

安心したように机へ向きなおろうとすると、また、ゴトリと鳴った。かすかに靴底の擦れる音がきこえる。……そっと誰れか階段をあがってくるのだ。抽斗のなかへ手早く写真をさらえこむと、ふりかえりざま、

「どなた」

と、叫んだ。……返事がない。

(そうそう、さっき西貝を迎いにやったっけ。……畜生め、なんだって黙ってあがって来やがるんだ)

立ちあがりながら、乾が声をかける。

「西貝君かね」

扉がしずかに開いた。

はいってきたのは古田子之作だった。蒼ざめて、ひどく兇悪な顔をしていた。唇がピクピクとひきつり、その間から白い歯が見えたり隠れたりしていた。後ろ手で扉をしめると、くゎっと見ひらいた眼で乾を見すえたまま、のっそりと近づいてきた。