Classici giapponesi con furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate
帽子をぬいで雫をきりながら、
「よう、今晩は」
と低い声で、いった。
乾は眼に見えないほど、すこしずつ寝台のほうへ後しざりをする。古田は椅子をひきよせて掛けると、ニヤリと凄く笑った。
「今日は、お礼にやってきた」
乾はわざと驚いた顔で、
「……お礼……、何ですか、そりゃ……、あたしはべつにあんたから……」
「やかましい!」
ピタリ、と口を封じられてしまった。
「その前にすこしききてえことがある。突っ立ってねえで、そこへ掛けろ」
乾は用心深く寝台にかける。
古田はがっちりと腕組みをして、
「ときに、お前の商売はなんだ」
「……ごらんの通り、古家具をやっておりますが……」
「そうか。……じゃ、お前はべつに警察の人間というわけでもねえのだな」
「飛んでもない……」
「じゃア、なんのためにおれを密告た。……洒落か。……それとも、酔狂か」
古田の歯が、カチカチと鳴った。
乾は扉のほうへチラリと眼を走らせる。
(こりゃ、助からないことになった。……本当のことをいったら、なにをしでかすかわかったもんじゃない。……ひとつ、なんとか胡魔化して切り抜けるか……)
古田は叱咤した。
「なんとか吐かせ!」