Classici giapponesi con furigana
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なべしまかいのかみ
鍋島甲斐守
吉川 英治
Leggi 鍋島甲斐守 (なべしまかいのかみ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.322 caratteri · 23 schermate
『では私に、死ねというようなものです。……新さん、私は、わたしはもう……ただの体じゃあないではありませんか』
『…………』
新之助は、闇の中の又闇の中に、もう一箇の人間のかたちになりかけた一塊の血液を思いうかべて、自分が確かに為した事の結果に、慄然とおののいた。
――男女は裏口から出て行ったらしい。
彦兵衛は、階下のささやきを、梯子だんの上からそっと首をのばして聞いていた。
(心中などしはしまい)
そう考えて、自分をなぐさめたが、生きてゆくとしたら、あの男女はどうするだろう。
階下の金箪笥へ、手をかけた様子もない。金を持って出ないとすれば、死ぬ気ではないかとも疑われる。
『五ツの年から、今日まで育てて来た養女だ。――あんな者に持って行かれちゃあ……』
彦兵衛は急に、お高の体が、金のように惜しくなった。妊娠していても、子どもは後でどうにでもなると思う。
『そうだ』
すぐ裏口から彼は外へ追いかけて出た。
男女の影は、もう見当らなかった。だが、見当っても、新之助へいきなり食ってかかる事は、多分な危険があると思った。お高を奪り返せる自信もないし、うかつに寄りつけそうもない気がする。