Classici giapponesi con furigana
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むぎわらぼうし
麦藁帽子
山本 周五郎
Leggi 麦藁帽子 (むぎわらぼうし) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6888 caratteri · 14 schermate
ほかに傷はなかったが、ひどく頭を打ったので、早速医者を招いて治療したけれど、すっかり記憶をなくして、そのまま白痴同様になってしまったものである。
吾八が病床にいるあいだ、絹子はほとんど夜もろくに眠らぬほど看護してやったが、吾八は反対に絹子の近づくのを嫌い、彼女が嫁いでいってしまうまでまったく口を利かなかったという。――吾八が白痴になったことについては、村人たちは誰でも猿の祟りであるといっている。
「それ以来ずっと松屋敷で世話をみてもらっているんですの、なかなかできたことじゃございませんねえ」
女中は饒舌にひと区切つけた。
「なんでも松屋敷のお嬢さんが十二三の頃、町へ出たときあの人に麦藁帽子を買って来てあげなすったことがあるそうですけれど、それがいつまで残っているわけもありませんし、またあんなに大きな物じゃなかったという話ですわ、まあ白痴のことですから好き勝手なことを云うのでしょうが、あれでいつまでも生きていられては松屋敷でも大変でしょうよ」
「その絹子という人はどうしたのかい」
「今でも達者でいらっしゃいますわ、もう五人もお孫さんがおありです」
斧田は一人になると、自分の心がひどく痛めつけられているのを感じた。