Classici giapponesi con furigana
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むぎわらぼうし
麦藁帽子
山本 周五郎
Leggi 麦藁帽子 (むぎわらぼうし) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6888 caratteri · 14 schermate
なぜであろうか、女中の話した吾八の身上はきわめてありふれたもので、その中にはことさらに人を感動せしめる悲劇も喜劇も含まれてはいない。絹子がかつて彼に贈ったという麦藁帽子と彼が自分で云うところの、嫁になるべきであったある娘が嫁ぐ前に贈ったと称する帽子とが、何か深い連関をもっていると考えることはあまりに通俗小説めいていて真実を枉げることになろうし、崖から堕ちたことも、愛する娘が他人の嫁になると定った絶望の結果、彼が自らそうしたのであると思えば思えぬこともないが、それとしてもおそらく事実から遠い空想にすぎないであろう、――そうとすれば、斧田が女中の話で心を傷つけられた原因はひとつしかない、それは斧田が老人から与えられた楽しい幻想をむざんに打砕かれたからである。老人の話は茫漠として取止めのない断片であって、統一した筋もなく纒りもなかったが、それには全体として現実をとびはなれた奇妙な美しさが匂っていた。麦藁帽子をぬいで斧田に示したときの老人の眼は、どれだけ多くの条件を具えた真実よりもずっと高い真実に輝いていたし、哀れな吾八をいたむ口調の中には、底知れぬ愛情と憐愍がこめられてあった。