후리가나로 읽는 일본 고전
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らくになったというはなし
楽になったという話
山之口 貘
山之口 貘의 楽になったという話(らくになったというはなし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 2,208자 · 5화면
僕は、夜中の市中を歩き廻わっていたので、一晩のうち十四、五回も誰何を受けたことなどあった。二度や三度の誰何を受けるのは常であったが、足の指のはみ出した破れ靴や夏冬着通したアルパカの上衣に、折鞄など持っている僕の姿は、自分ながらも誰何したいのであったから、その筋の眼には余計にそうであったろう。夜々の誰何、ひるまの誰何の話から、佐藤春夫氏は氏の名刺を一枚呉れたのである。その名刺の裏には、――詩人山之口貘は風体いかがはしきも善良ナル市民ナリ――と書いてくれた。その後は誰何される度に名刺を示したので相手の好奇心をかき分けて歩くに便利なのであった。そんな時には四つん這いになってライオンの口真似でもしてみたいような衝動にも駆られるのであったが、遂に、唖の動物のように、一度も吼えたことがなかった。万一、僕が檻の中に入れられたりした場合は佐藤春夫氏が身柄を引受けに来て呉れるとのお話などもあって、その時は僕のことを次のように説明するとのことであった。――山之口貘はむかしは人殺しをしたことがあったかどうかは知らないが自分とつきあうようになってからは実に善良なのである――と。