후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 145,078자 · 285화면
「さてこの世間ばなしをよく考えてみますと」甲斐は片手をゆらりと振った。その手には杯を持っていて、残っている赤い酒が、杯の中でこぼれそうに揺れた、「――その証文は三十万石分与ということが目的ではなく、さる大名の家中を紛争におとしいれて公儀の御評定にかけ、仕置かた不取締りという御裁決で、六十万石改易にもってゆく」
「待て原田、待て」と大和守が云った。
甲斐は低頭して、「八十島主計でございます」と微笑した。
「いまの一言、ゆるがせならぬことだぞ」と大和守は云った、「たとえ世間ばなしにことよせたにせよ、六十万石改易が真の目的であったとは、酒井侯ばかりでなく幕府ぜんたいを誹謗するものだ」
「ではうかがいます、その証文はどういう意味でございましょうか」甲斐は杯を置いて、静かに大和守を見まもった、「十年以前、御側衆であられた某侯が、ひそかに同じ趣意の忠告を与えられました、僕は三十万石分与という密約のあることを知って忠告をなされた、もちろんその証文の他のお一人は、天下に並ぶものなき御威勢のある方です、しかし、――いかに御威勢並ぶものなき方でも、六十万石を分割し、御自分の縁辺に当る者に三十万石を分与する、などということができるものでしょうか」