후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 145,078자 · 285화면
七十郎の顔から、冷笑と、皮肉な色が消え、彼は持っている盃をみつめた。
甲斐と、大鹿と、久兵衛。
追う者と追われる者と、三者が一つに対決したとき、生と死が逆転した。もしもふじこの云うとおりなら、と七十郎は心のなかで思った。どうして生死が逆になったのだ、久兵衛はなぜ甲斐を射たずに、くびじろを射ったのだ、彼は甲斐を跟け覘っていたのだし、甲斐は角にかけられて、死を待つばかりだった、というではないか。
それなのに、どうして久兵衛は、甲斐を射たずに鹿を射ったのだ、どうしてだ、館主とその領民という関係からか。いや、それなら初めから、鉄砲を持って跟け廻すなどということはしないだろう。そうだ、おそらく理由はあるまい、引金を引く瞬間には、久兵衛はなにも考えてはいなかったろう。銃口はしぜんに動いたのだ、その刹那に、なにかの「力」なにかの「意志」といった、眼に見えないものが久兵衛を支配したのだ。七十郎はそんなことを思いながら、実際には、頭のなかでまったくべつのことを考えていた。彼は黙って酒を飲み、ふじこは訝しそうに、急に沈黙した彼を、眺めていた。
十左が戻り、鷺坂が戻ったとき、七十郎の表情はまったく変っていた。