후리가나로 읽는 일본 고전
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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 蜘蛛の夢(くものゆめ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 147,189자 · 298화면
「友さんは遅いねえ。」
ひとりごとを言いながら、母のお銀は格子をあけて表を見た。明治十三年九月の末の薄く陰った宵で、柱時計が今や八時を打ったのを聞いてから、お銀は長火鉢の前を離れて門口へ出たのであった。
せがれの友之助は独身の若い者であるから、残り番だとか宿直だとか名をつけて、時どきは夜おそく帰ったり、泊って来たりすることもある。お銀もそれを深く咎めようとはしなかったが、親ひとり子ひとりの家庭であるから、せがれの帰らない夜はなんとなく寂しい。今夜も遅いのか、それとも帰らないのかと、お銀は単衣ではもう涼し過ぎるような夜風に吹かれながら、わびしげに暗い往来をながめている時、ふと気がつくと、隣りの空家の出窓の下にひとりの女が立っているらしい姿がみえた。窓の下には細い溝があって、石のあいだにはこおろぎが鳴いている。その溝のふちにたたずんで、女は内をのぞいているようにも見えたので、お銀はすこし不審に思った。
「もし、どなたでございます。お隣りは空家ですが……。」と、お銀は試みに声をかけた。
「はあ。」
女は低い声で答えたかと思うと、そのまま暗いなかに姿をかくしてしまった。