후리가나로 읽는 일본 고전
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
岸田 国士의 光は影を(ひかりはかげを)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 138,262자 · 276화면
振り出しは中国さ。揚子江に沿つて、まず四川にはいる。アジア大陸横断にどれくらいかゝるか。天山南路はもう眼の前だ」
「だからさ、今は何をしてるんだ、今は?」
重ねて返事を促すと、
「む、今か、今は、ちよつとした仕事さ。フランス・ミッションの翻訳の下受みたいなことさ。お前にだつて出来るぞ。紹介してやろうか?」
「ごめんだ」
と、彼は断つた。それをなぜ断つたか、今になつて理由がわからないのである。
母が階下から、彼を呼んでいる。
「兄さん、用意ができたよ」
ハッと我れに返つて、彼は、起きあがろうとした。弟が寝返りを打つた。幼な顔のまだありありと残つている静かな寝顔であるが、もう二十を過ぎた男の、血気とでも言いたい逞しさが少し突き出た頤のあたりの筋肉の線に隆々と盛りあがつていた。
「深志、眠つてるのか?」
ちよつと声をかけてはみたが、それは、眼をさまさせはしなかつたかという配慮からで、反応がないとみると、彼はそのまゝ階段をゆつくり降りて行つた。
さて、こうして母と二人、向い合つて坐つていると、彼は自分の方からなにも言い出すことがないのに驚くのである。自然、むつつりと、たゞ箸を動かし、飯茶碗が空になるとそれを差出す。