후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 145,078자 · 285화면
影と形
と甲斐は云った、「だがまだ三日いとまがある、今夜は二人でゆっくり飲もう」
「あと三日、ほんとですか」
「あれを肴に飲もう」甲斐はおくみに酌をしてやりながら、聞えて来る唄のほうへ首を振った、「いい唄だ、――あの二人は誰の助けもかりず、自分たちの力だけで仕合せをつかんだ、あの唄は二人の仕合せを支えてゆくだろう」
おくみは盃を返した。甲斐はそれには気づかないようすで、しんと、うた声に聞きいっていた。
影と形
「寛文八年十一月、里見十左衛門病死」
甲斐はそう読みながら、書いてある文字をぼんやり見まもった。それは彼自身の書いた日記で、万治の大変以来、家中に起こった出来事や、自分で経験し、また見聞したことが記してある。甲斐は三日まえから、その日記の整理にかかっていた。机の上の硯箱には、黒と朱と二つの硯があり、彼は読むにしたがって、無用と思える記事を消し、必要な項目には朱筆で注を加えるのであった。
――こんなことをしてもむだだ。
甲斐は幾たびかそう思った。こんなことをしても、なにかの役に立つとは考えられない。けれども、あったことの事実を慥かめておく必要はあろう。万治の事から十年あまり経っただけで、もう事実が歪められ、あいまいになった例も多い。