후리가나로 읽는 일본 고전
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
蘭 郁二郎의 火星の魔術師(かせいのまじゅつし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 151,120자 · 302화면
十一ノ三
(ほんと、でなければいいが――)
(いまのままでいい。優しい言葉一つかけてくれなくとも、冷めたい眼で見られても――それでも毎日、彼女の身近かに自分があることだけでもいい……)
黒吉は、もうじっとしていられなかった。
薄暗くなり出した曠漠たる飛行場を横切って、千鳥食堂へ急ぎ出した。
十一ノ三
夕日は、腐った血の色だった。
不吉の前兆のような、無気味な静さが、原っぱの上全体に押しかぶさって、夕靄が、威圧するように、あたりを罩めていた。そして颯々と雑草を薙る黝黯い風……。
行く手に、ぼんやりと千鳥食堂の灯が、漾って来た――と同時に若い女の後姿が、仄々と影絵のように、浮び出て来た。
(おや、葉子かな)
その特徴のある、悩ましく腰をゆすって行く女は、正しく葉子であった。
(畜生――、あの化粧問屋の情夫に、逢いに行くんだな……)
黒吉は、頭がカーッと火熱って来た。そして、片足の男とは思われぬほどの、恐ろしい速さで、原っぱを駈け出した。
「葉ちゃん――」
やっと追ついた黒吉は、上ずった、嗄がれた声で、飛つくように、呼止めた。
「え――」
はっと振向いた葉子の顔には、一瞬、本能的な恐怖の、黒い影が散った。