후리가나로 읽는 일본 고전
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
蘭 郁二郎의 火星の魔術師(かせいのまじゅつし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 151,120자 · 302화면
六
(俺は、昼日中、夢を見ているのじゃないか――)
黒吉は、何時も腰掛ける衣裳箱に、ストンと腰を落した。
箱の冷めたかったせいか、氷のような恐怖を覚えた。
(俺は、気が違ったんじゃないか――)
こんなことを沁々と考える程、恐ろしいことはない。
自分は、気が確かだ。と、どの証拠で断言することが出来よう。狂人だって考えることは出来る、物を視ることも出来る。喋ることも、聴くことも、寝ることも、走ることも――。
それらのことが、「さあ、どうだ、どうだ」とばかり、恐怖と、懊悩の泥沼に、黒吉自身を押込むのだ。
六
「ちぇっ、勝手にしやがれ……」
黒吉は、ネトネトと口の中で澱んだ言葉を吐棄てた。
「俺が、この俺が気違いだって。ふん」
彼は、胸の中の心配を引剥がす為に、わざと声を立てて、自分自身を嘲笑した。
しかし、誰もいないところで、大きく独語をいったあとは、却って、狂気染みた静けさだった。
ジッとしては、いられない気がして、どんと一つ思い切り勢いよく、腰掛けていた衣裳箱から立ち上ったもののやっぱり、何かしら「不安」が自分の後に、つきまとっているようで、黒吉は、何処へ行くでもなく、汚点だらけの防水幕に仕切られた楽屋の片隅を、檻の中の熊のように、往きつ復りつしていた。