일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

岸田 国士의 光は影を(ひかりはかげを)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 138,262자 · 276화면

아오조라 문고

兄さん、兄さま、お兄さん、なんとこの自分を呼ぶかだ。妹らしい妹、多津よりも美佐よりも鷹揚に可愛がつてやれる、生意気でない、しかし、なんでもわかる妹、真喜、真喜……と、彼は、小さな声で、その妹の名を繰り返した。

彼は、夢中で歩を速めた。朝靄につゝまれた武蔵野の雑木の立木が、見覚えのある荻窪界隈の街道筋を、ぼんやり真向うに浮び出させる頃、彼は、額にも、背にも、しつとり汗をかいていた。

いくども爆撃の目標になつたと伝えられる飛行機製作所の本館の建物が、依然として残つているのは意外だつた。

彼の家は、そこからあまり遠くない、清水町と呼ばれる新開住宅地のとつつきにあつた。戦災をまぬがれた一画の、それでも、すべてが荒れるにまかせてある、わびしい生活のかげが家々をおおつていた。その昔、きれいに刈りこまれた生垣が、今は、ジャングルのように枝葉が伸び放題になつている元貴族院議員の邸の門には、その標札が消えて、別の名前が出ていた。いつも会えば向うから笑いながら帽子を脱ぐ大学教授の、小じんまりした洋館の芝生の庭は、キャベツと大根の畑になつている。その庭の隅で、向うむきにしやがんだ撫で肩の細君が、団扇で七輪の火をおこしていた。