후리가나로 읽는 일본 고전
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
岸田 国士의 光は影を(ひかりはかげを)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 138,262자 · 276화면
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彼は、彼女と最初に識り合つた日のことをはつきり覚えている。
それは太平洋戦争の始る前の年の夏の終りであつた。彼はまだ外国語学校に籍はおいていたが、家庭教師、筆耕、翻訳の手伝いなどの収入で、少しでも家の負担を軽くしようと、それこそ青春の誘惑には眼もくれぬという時代であつたが、ある日の夜遅く、高円寺に住む某銀行家の息子の中学生に初歩の英語を教えに行つた、その帰りみちで、ふと誰かが落したらしい紙入れを拾いあげ、駅前の交番へそれを届け出た。ところが、その紙入れの落し主が、ちようどその交番へ来合わせていて、話はすぐにわかつた。落し主というのは、五十がらみの紳士で、やはり高円寺に住んでいるらしく、差出された名刺には何々製薬取締役とか、何々協会理事とかいう肩書が二つ三つ並べて書いてある。警官に中身を一応調べさせ、現金はいくらもはいつていないが、この通りの額の小切手も入れてあることだし、慣例に従つて、一割のお礼をしたいと、その紳士は申し出た。そして、折鞄から小切手帳を出して、その場で二千何百円という小切手を書こうとするのを、京野等志は、そんなものは絶対に受取らんと断つたのである。