후리가나로 읽는 일본 고전
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
岸田 国士의 光は影を(ひかりはかげを)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 138,262자 · 276화면
そういえば、長久保夫人の近況は知つているか。先月末に盲腸の手術を受けて、目下松本県立病院に入院加療中の由だ。経過ははじめ順調と聞いていたが、予定よりすこし長びいているのは、どうしたわけか。別に容態悪化という話は聞いていない。
話は前に戻るが、問題の娘は、百瀬しのぶ、二十歳、もちろん実家は百姓、没落組の地主だが、父親は身勝手な自由主義者の一人、小生の血を分けた兄で、同時に、不倶戴天の政敵だ。お含みを願う。
京野等志は、実は、この手紙を読みおわつた瞬間、文学志望の娘、百瀬しのぶとやらのことよりも、病院のベッドで呻いているかもしれぬ長久保小萩のことで頭がいつぱいになつていた。彼は、すぐにも松本へ飛んで行きたい衝動にかられたが、相手がどの程度にわるいのかを考えると、軽率に病床をさわがせるのは心なきわざのように思われた。
それにしても、と、彼はやつと、百瀬秀人の依頼のすじを、もう一度真面目に取りあげ、漠然とながら、その娘の希望を読みとり、自分にいつたい何ができるかを考えてみた。
いくら考えてみても、身近にこの娘を托すべき人物は見当らなかつた。文学の修業といつても、常識からいつて、必ずしも文士の家へ弟子入りをしなければならぬと限つてはいない。