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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

寺田 寅彦의 寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 213,804자 · 425화면

아오조라 문고

またたとえばドイツやイギリスにはほんとうの「夏」が欠如している。そうしてモンスーンのないかの地にはほんとうの「春風」「秋風」がなく、またかの地には「野分」がなく「五月雨」がなく「しぐれ」がなく、「柿紅葉」がなく「霜柱」もない。しかし大陸と大洋との気象活動中心の境界線にまたがる日本では、どうかすると一日の中に夏と冬とがひっくり返るようなことさえある。その上に大地震があり大火事がある。無常迅速は実にわが国の風土の特徴であるように私には思われる。

日本人の宗教や哲学の奥底には必ずこの自然的制約が深い根を張っている。そうして俳諧の華実もまた実にここから生まれて来るような気がする。無常迅速、流転してやまざる環境に支配された人生の不定感は一方では外来の仏教思想に豊かな沃土を供給し、また一方では俳諧のさびしおりを発育させたのであろう。

私のこのはなはだ不完全に概括的な、不透明に命題的な世迷い言を追跡する代わりに、読者はむしろ直接に、たとえば猿蓑の中の任意の一歌仙を取り上げ、その中に流動するわが国特有の自然環境とこれに支配される人間生活の苦楽の無常迅速なる表象を追跡するほうが、はるかに明晰に私の言わんと欲するところを示揚するであろう。