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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

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N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 213,804자 · 425화면

아오조라 문고

だけではいけないであろう。それには、もっとデリケートな調節器官が入用であって、その大切な役目を務めるのが弓を持った演奏者の手首であるらしい。普通の初等物理学教科書などには弦が独立した振動体であるようなことになっているが、あれも厳密に言えば弦も楽器全体も弓も演奏者の手もおよそ引っくるめた一つの系統として考えるほうがほんとうだと自分には思われる。そうして音の振動数は主として弦で決定するが、音色を決定する因子中の最も主要なものが手首の運動をつかさどるところの筋肉の微妙な調節にあるように思われるのである。

このように楽器の部分としての手首、あるいはむしろ手首の屈曲を支配する筋肉は、少しも強直しない、全く弛緩した状態になっていて、しかもいかなる微細の力の変化に対しても弾性的に反応するのでなければならないのである。

この手首の自由の問題は弦楽器のボーイングに限らずその他のいろいろな技術の場合にも起こって来るからおもしろい。

玉突きをするのにキュー尻のほうを持つ手の手首を強直しないよう自由に開放することが必要条件である。手首が硬直凝固の状態になっていてはキューのまっすぐなピストン的運動が困難であるのみならず、種々の突き方に必要なキューの速度加速度の時間的経過を自由に調節することも不可能であるように見える。