후리가나로 읽는 일본 고전
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ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
松本 泰의 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選(ひかげのまち)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 52,797자 · 107화면
日蔭の街
一
歳晩の寂しい午後であった。私は、青い焔をあげて勢よく燃えさかっている暖炉の前へ、椅子を寄せて、うつらうつら煙草を燻らしていた。私の身のまわりは孰れも見馴れたもの計りで、トランクは寝台の下に投込んであり、帽子掛には二つの帽子と数本のステッキがある。飾棚の漆塗の小箱、貝細工の一輪挿、部屋の隅に据付けてある洗面台の下の耳のとれた水差、それから二組の洋服と外套の入った洋服箪笥、それ等はあった儘に位置を変えず、灰を被ったように寂然と並んでいた。私は気易いのびのびした心持で、四辺の見窄らしい石版画の額や、黄色くなった窓レースを眺め廻した。表道路に面した窓の外に素焼の植木鉢が投出してある。夏前には羊歯種の草が青々と繁っていた。
私はこの宿へ来てから一年になる。その前は学校の近くの旅館にいたり、高燥なH街の某軍人の家などにおいて貰っていたが、最後に腰をすえたこの家が一番気に適っている。性来なまけもので、その上、人づき合のわるい私は、学校友達も煩く、勤厳な家庭で、酒は飲むなの、門限は幾時だのと干渉されては迚もやりきれない。その点で私は現在住んでいる宿を礼讃する。