후리가나로 읽는 일본 고전
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いけぶくろのかい
文藝別冊[総特集]岡本綺堂
岡本 綺堂
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N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 72,671자 · 149화면
菖蒲湯、ゆず湯、盆と正月の貰い湯、留桶新調、それらのほかに正月の三ヶ日間は番台に例の三宝を置いて、おひねりを受取る。これは湯屋の所得である。こういう風に数えて来ると、なんの彼のと名をつけて、普通の入浴料以外のものを随分徴収されたようであるが、一年三百六十五日の長いあいだに、そのくらいの事は仕方がないと覚悟して、別に苦情をいう者もなかった。今日に比べると、その当時の浴客は番台と親しみが深いようであった。番台には今日と同様、湯屋の亭主か女房か又は娘が坐っていたのであるが、顔なじみの客が来れば何とか挨拶して話しかける、客の方でも何か話しているのが多かった。世の中が閑であったせいもあろうが、そんなわけで双方の親しみが深いので、前にいう菖蒲湯その他のおひねりも快く支払われたのであろう。
夜は格別、昼間は入浴の客も少く、番台にぼんやり坐っているのも退屈であるので、大抵は小説や雑誌などを読んでいる。その読物を貸してくれる客も多かった。貸してくれるばかりでなく、又それを借りて行く客もある。つまりは番台を仲介所にして、小説や雑誌の回覧を行っている形であった。一々に見物するわけでもあるまいが、番台の人たちは芝居の噂などをよく知っていて、今度の歌舞伎座はどうだとか、新富座はどうだとか云って話した。