후리가나로 읽는 일본 고전
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いけぶくろのかい
文藝別冊[総特集]岡本綺堂
岡本 綺堂
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N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 72,671자 · 149화면
下
お久どんから何んなに窘められるであろう。それを思うと、お菊は帰るにも帰られなかった。
長助どんに相談したら必然若旦那に訴えるに相違ない。そうなると、妾は生証人に曳き出される。お内儀さんやお久どんはそんなことを頼んだ記憶はないと云うに決っている。妾一人が罪をかぶせられて、根も葉もない讒言を構えたと云うことになる。それもあんまり口惜いと彼女は思った。
それと同時に彼女は黄八丈の小袖も欲かった。若いお内儀さんも気の毒であった。よもやと思うものの、若しお熊さんがこの川へ飛び込んだら何うなるであろう。彼女はまた悚然とした。
「この川で死ねるかしら。」
お菊は川岸へ出て怖そうに水の面を覗いて見た。空はまだ暮れ切れなかったが、水の光は漸次に褪めて、薄ら寒い夕靄の色が川下の方から遡るように拡がって来た。水は音もなく静かに流れていた。
番太郎が七つ半(午後五時)の析を打って来たのに驚かされてお菊は慌てて内へ入った。
下
お菊はその晩寝付かれなかった。自分を睨んでいる若旦那の怖い顔や、泣いて自分に頼むような若いお内儀さんの痛々しい顔や、むずかしそうな在所の両親の顔や、十両の小判や、黄八丈の小袖や、それが走馬燈のように彼女の頭の中をくるくると廻った。