후리가나로 읽는 일본 고전
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いけぶくろのかい
文藝別冊[総特集]岡本綺堂
岡本 綺堂
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N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 72,671자 · 149화면
魚屋かしらと思ってよく見ると、その盤台の底には少しばかり水を入れて、うすぐろいような不気味な動物が押し合って、うずくまっていた。それは山椒の魚であった。箱根ばかりでなく、ここらでも山椒の魚を産することは僕も知っていたので、しばらく立ち停まって眺めていると、学生の一人はさんざんひやかした末に、とうとうその一匹を買うことになったらしい。かれらは生きた山椒の魚を買ってどうするのかと思いながら、僕はその落着を見とどけずに内へはいってしまったが、学生たちは大きい声でげらげら笑っていた。
「お風呂が沸きました。」
かの小女が知らせに来たので、僕はあたかも書き終った日記の筆をおいた。手拭をぶらさげて下の風呂場へ降りて行くと、廊下で若い女に出逢った。それは駅のまん中でさっき見かけた女学生の一人であるので、かの一組もやはり同じ宿に泊まりあわせているのだということを僕は初めて知った。木曾の水は清いところであるから、いい心持で湯風呂にひたって、一日の汗を洗いながして上がって来ると、ひと間隔てた次の座敷でなにかどっと笑う声がまたきこえた。よく聞き澄ますと、それは宿の入口で山椒の魚を買っていたかの学生たちで、買って来たその動物をなにかの入れ物に飼おうとして立ち騒いでいるらしかった。