후리가나로 읽는 일본 고전
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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
田中 貢太郎의 日本の怪談(ぎじんのすがた)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 56,030자 · 115화면
老女はその老人の無作法な態をよく見て置いて、後で主人の備後に話して思うさま油を絞ってやろうと思った。彼女は舌を出して障子の紙を舐(ねぶ)り、そっと穴を開けて隻方(かたほう)の眼をそれに当てた。そして、老女は其処に怪しい物を見つけた。行灯の灯を浴びて大きな犬のような赤毛の猫が頬冠(ほおかむり)をして、二本の後肢で立ち、その足で調子をとりとり、前肢二本を手のように揮(ふ)って踊っていた。それはその邸に年久しく飼われている猫であった。老女は眼を瞬った。
猫は彼方此方と身体の向きを変えて踊っていた。頬冠した手拭の結び目が解けかけていた。老女は呼吸(いき)をつめてその態をじっと見つめていたが、なんと思ったのかそのまま便所の方へ往き、そして、用を足して引返しながらその室の前を通ったにもかかわらず、今度は脇見もせずに静に己(じぶん)の室へ帰って寝た。
老女は飼猫の怪を見たが、そんなことを口にしては、第一壮(わか)い奥婢たちが恐れて仕事の邪魔になるし、また山内家の家老として当時権勢のあった柴田備後の家に、そんなことがあると聞えては主人の威信にも関すると思った。賢明な彼女は男勝りのしっかりしたその腹の中へ、それをしまい込んで何人(たれ)にも話さなかった。