후리가나로 읽는 일본 고전
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えのきものがたり
榎物語
山本 周五郎
山本 周五郎의 榎物語(えのきものがたり)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 33,519자 · 67화면
四
ことに、それまで人から愛されたことも、気にかけてもらったこともなく、そういうことを求める望みを持ったためしもない者なら、その新しく生れた感情がどんなに力づよく、純真に、拒みがたい作用をするかは云うまでもあるまい。その日の夕刻、もう手許が暗くなりかけてから、さわはそっと庭へ出ていった。――それはちょうど、国吉が諦めて、榎の傍らから去ろうとするところであった。靄のたちこめて来た黄昏の中で、二人はお互いの姿を認め、静かに双方から歩みよった。
四
二人はいつも榎の陰で逢った。国吉がその日の仕事を終っている限り、人の眼を忍ぶ必要はなかった。国吉もさわも、周囲の者に殆んど関心を持たれてはいない。そこにいてもいなくても、誰の注意をひくこともなかったからだ。慥かにその筈であったが、一人だけ無関心でない者がいた。さわのために、妹なかの縁談を順序ちがいだと非難した老僕、足助がその当人であった。足助はよほどさわを大事に思っていたのだろう、国吉とさわが榎のところで、毎日のように逢っているのをみつけ、あるじ半左衛門に告げた。
足助はさわの味方をする者が、自分と国吉の二人だけだということを知っていたし、同時にこの屋敷じゅうで国吉ひとりは好ましい若者だと信じていた。