후리가나로 읽는 일본 고전
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えのきものがたり
榎物語
山本 周五郎
山本 周五郎의 榎物語(えのきものがたり)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 33,519자 · 67화면
宿から呼ぶ客の中には、幾人か馴染ができていた。はじめのころは思い違いをして、そっと金を握らせたうえ自由にしようとする客もあった。いまでもときたまそんな経験をするが、宿屋のほうで気づき、初めての客にはその点をはっきり断わってくれるので、始末に困るようなことはなかった。茶の手前をたのしもうというのだから、若い客はめったになく、たいていが老人であり、それも裕福な身分の人が多かった。江戸日本橋の呉服商の隠居だという老人は、榎の下で野だての茶を珍しがり、宿へも呼んでくれたが、どうしてこの稼ぎを思いついたのかと訊いた。
「子供のじぶん聞いた話ですけれど」とさわは答えた、「お江戸の神田にお玉ヶ池というところがあるそうですね」
「池はないけれどね」
「ずっと昔そこで、お玉という人が茶をたてて往来の人にすすめ、それでくらしていた、ということを聞きましたの」
江戸だからそれでもくらすことができた。こんな越後街道の田舎では、なかなか稼ぎにはならないだろう、とその隠居は云った。女ひとりのことであるし、読み書きなども教えるから、どうやら飢える心配もないようである、とさわは答えた。