후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 145,078자 · 285화면
――この男だ、こいつがいたからだ。
六郎兵衛はそう思ったが、ふしぎなことに怒りはおこらず、腹からすっと力がぬけてゆくような、しらけた気持で聞いていた。
「私と滝尾どのとのかかわりはその程度までで、まもなく滝尾どのは屋敷を出てしまったのです」玄四郎は証文のことを隠すために、自分の顔が赤くなるのを感じた、「はっきり申しますが、どうか怒らないで下さい、――滝尾どのには、私のほかに男があったのです、私はその男に会いました、池之端の茶屋でしたが、滝尾どのがその男を私にひきあわせたのです」
「おみやが、ひきあわせたって」
「まだ若い男で」玄四郎は口ごもりながら云った、「滝尾どのより年下でしょう、町人ふうで名は新八とか云いました」
六郎兵衛は動かなくなり、盃を持った手を膝に置いたまま、かなり長いことじっと息をひそめていた。それから急にわれに返ったようすで、玄四郎に酌をさせ、続けさまに三杯、呷りつけるように飲んだ。
「それはいつのことだ」
「三年まえの夏、六月のことでした」
「それで、――」
「それからまもなく、滝尾どのは屋敷から出てゆかれたようです、私はずっとあとで聞いたのですが、ことによるとそのときそのまま、新八という男と立退いたのかもしれません、詳しいことを訊くわけにはいきませんでしたから」