후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 145,078자 · 285화면
甲斐は半ば残っている杯の酒を、火にかざして眺めていたが、その眼をあげてふと、大和守のうしろに佩刀を捧げている小姓に向けた。
「聞こう」と大和守が云った。
「まず御覧を願いたいものがございます」と会釈して、甲斐はふところから、奉書に包んだ書状を取出し、小姓に向かって、「これを、御前へ――」と云った。
「それには及ばぬ、そのまま寄れ」と大和守が云った。
甲斐は膝ですり寄って、その書状を差出したが、大和守が受取るとすぐに、元の座までさがった。
「これはどういうものだ」
「まず御披見を願います」
大和守は杯を置いて、包んである奉書紙をひらき、中から四つにたたんだ書状を出した。そうして、燭台のほうへ向けて、書状を眼からやや遠ざけながら読んだ。甲斐の眼はするどくなり、大和守の表情の、どんな変化もみのがすまいとするように、じっと眸子を凝らしていた。――大和守の顔はゆっくりと硬ばってゆき、下唇がさがった。書状を見る眼は動かなくなり、その表情には激しい驚きと、怯えたような色があらわれた。
大和守はその書状を、急に両手でぴたりと合わせた。その文面を自分の眼から隠そうとするような動作で、強く合わせた両手に挾まれて、紙の音が高く聞えた。