후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 145,078자 · 285화면
「涌谷さま」と甲斐は呼びかけた、「――お差料を、拝借いたします」
安芸は俯向きに倒れたまま、くいしばった歯のあいだから激しく荒い呼吸をしていた。甲斐はするどく呻きながら、ずるずると半身を起こし、安芸の席の脇にある、刀のほうへ手を伸ばした。それは人間の力を越えた努力で、ようやく片手が脇差へ届くと、そのまま意識が遠のきそうになった。
「まだだ」と甲斐は歯をむきだした、「まだだぞ、宗輔、まだだぞ」
甲斐は脇差をひき寄せ、横に倒れながら、最後の力をふりしぼって、それを抜いた。そこへ、大和守と内膳正が来た。二人はその座敷のむざんなありさまを見ると、息をのんで立停った。五人の仕手のうち、太田弥兵衛と石田伊右衛門が進み出て、その場の出来事を説明しようとしたが、大和守は耳も貸さずに、いきなり甲斐の側へ走りよった。
「原田、原田」と大和守は叫んだ、「久世大和守だ、わかるか」
甲斐は歯をみせた、「久世侯ですか、おめにかかりたかった」
「これはなにごとだ、原田、はっきり云え、なにごとがあったのだ」
「私です、私が逆上のあまり」
「そやつの刃傷です」と安芸の云うのが聞えた、「御当家の衆におちどはない、甲斐めのしわざです、久世侯、――こやつの罪で、伊達家に累の及ばぬよう、お頼み申します」