후리가나로 읽는 일본 고전
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おちむしゃにっき
落武者日記
山本 周五郎
山本 周五郎의 落武者日記(おちむしゃにっき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 11,460자 · 23화면
三の一
「それでは、あなたさまはまだ、御存じありませんのですか」
「知らぬとは、なにをです」
「佐和山のお城は陥ちました」
「……陥ちた」
祐八郎は愕然と声をあげた。
「それは、本当ですか」
「はい井伊、脇坂、小早川の軍勢が攻めかかり、昨日の朝とうとう落城したと、見て来た人の話でたしかに聞きました」
「……そうか。……ついに佐和山も、落城か……」
絶望と悲憤とで、祐八郎は身も心もうちのめされてしまった。……たった一つの希望、残された唯一の死場所がなくなったのだ。
祐八郎の絶望をそれと察したのであろう、娘はそっとすり寄って、
「もしあなたさまさえおよろしかったら」
と心を籠めた調子で云った。
「この家でお怪我の養生をあそばしませぬか、そのうちには治部少輔さまのお行衛も知れましょう。それからお駈けつけなさいましても遅くはないと存じますが」
「ありがとう……できればそうしたいのだが」
祐八郎はそう云いながら娘の眼を見上げた。
三の一
娘の眼は、朝のときのように泪をためていた。眉のあたりに、男を憐れみいとしむあたたかい愛情が、溢れるように滲んでいた。
――若菜。
祐八郎はそう呼びたかった、しかしようやくそれを抑えつけた。