후리가나로 읽는 일본 고전
ja-reading.com
후리가나가 있는 일본 고전을 온라인으로 읽으세요. JLPT 수준으로 골라 보고, 단어를 눌러 뜻을 확인하고, 문장을 번역하세요.
とうじゅうろうのこい
藤十郎の恋・恩讐の彼方に
菊池 寛
菊池 寛의 藤十郎の恋・恩讐の彼方に(とうじゅうろうのこい)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 37,146자 · 74화면
が、藤十郎は芸能と云う点からだけでは、自分が七三郎に微塵も劣らないばかりでなく、寧ろ右際勝りであることを十分に信じた。従って、今まで足り満ちていた藤十郎の心に不安な空虚と不快な動揺とを植え付けたのは、七三郎との対抗などと云う事よりも、もっと深いもっと本質的なある物であった。
彼は、二十の年から四十幾つと云う今まで、何の不安もなしに、濡事師に扮して来た。そして、藤十郎の傾城買と云えば、竜骨車にたよる里の童にさえも、聞えている。また京の三座見物達も藤十郎の傾城買の狂言と言えば、何時もながら惜し気もない喝采を送っていた。彼が、伊左衛門の紙衣姿になりさえすれば、見物はたわいもなく喝采した。少しでも客足が薄くなると、彼は定まって、伊左衛門に扮した。しかも、彼の伊左衛門役は、トラムプの切札か何かのように、多くの見物と喝采とを、藤十郎に保証するのであった。
が、彼は心の裡で、何時となしに、自分の芸に対する不安を感じていた。いつも、同じような役に扮して、舌たるい傾城を相手の台詞を云うことが、彼の心の中に、ぼんやりとした不快を起すことが度重なるようになっていた。が、彼は未だいいだろう、未だいいだろうと思いながら一日延ばしのように、自分の仕馴れた喝采を獲るに極った狂言から、脱け出そうと云う気を起さなかったのである。