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あたまでっかち

あたまでっかち

下村 千秋

「赤い鳥」1935(昭和10)年2~4月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 17,773 字 · 36 页

青空文庫

」

林太郎は、しおしおとそこをでて、教わった、つぎの病院へいってみました。が、そこにもおっかさんはいませんでした。林太郎はそこでもまたべつの病院を教わって、また、そこへいってみましたが、やっぱりおなじことでした。そこでは、

「病院の名も知らずに歩いたってわかりっこないから、おうちへおかえり、でっかちあたまさん。」

と、いわれました。

林太郎はもう顔も上げられないほど悲しくなりました。それでただもう足のむいた方へ歩いていきました。町の灯がちかちか光って見えます。涙が目の中にいっぱいたまっているのでそう見えるのですが、林太郎はそんなことは気がつきません。ただ町中がなんとなく恐ろしく見えてきて、早くちかちか光る灯のないところへ出たいと思いながら歩いていました。

そのうちやっと暗い通りへでました。それをどこまでもいくと、広い原っぱへでました。そこは霞ガ浦のふちで、一面に夏草がはえしげっています。夏草には夜露がしっとりとおりています。林太郎はその草の露をふみながら、またあてどもなく歩いていきました。

「しろ公、どこへいったらいいんだよ?」

林太郎は、いつか足元にすりついて歩いているしろ公へ、そう話しかけていました。