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あるおんせんのゆらい

ある温泉の由来

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,655 字 · 30 页

青空文庫

悉皆で六人いた。相撲を取りながら待っていたのだった。早川君と草刈小僧の大将の間に論判が始まった。

「村の為めにならないことは小若い衆が見ていられない。君達の出ようによっては小突くから、そう思ってくれ給え」

「何が村の為めにならないのか? 言って見ろ」

「西は西だ。東の餓鬼と一緒に歩くのは間違っているだろう」

「馬鹿を言っちゃ困るよ。僕達は同級生だ」

「同級生でも東は東、西は西。チャンと区別がある」

「それが君達は間違っているんだ」

「口で分らなければ仕方がない。それ、皆」

と大将が号令をかけた。

六人が三人宛に別れて、僕達を抱き上げた。何うする間もない。予定が出来ていたのだった。僕達は宙に浮いたと思うと、頭と頭が小突き合い始めた。

「痛けりゃ恨め、おらっちの所為じゃないぞ。痛けりゃ恨め、おらっちの所為じゃないぞ」

と声を揃えて歌う。単純な考えだ。取っ捉まえて置いてコツンコをさせれば、お互に相手を恨んで仲違いをすると思ったのだろう。

「あゝ、痛い」

と言って、二人が起き直った時、いたずらもの達はもう逃げ出していた。

「野郎、覚えていろ」

早川君は泣きながら叫んで、後を追おうとした。