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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

三日は朝から家にいると、午後になって津田庄左衛門が訪ねて来た。初めてのことである。玄一郎は酒肴を出して昏れがたまで老人と静かに話した。

「宴会の公費まかないをよく拒みとおされましたな、おかげで私も割前を取られたくちですが、あれは悪い習慣で、これまでも幾たびか反対が出たのですが、いつも若いれんちゅうに押されてうやむやになって来たものです」

「古い慣例はなるべくそっとして置きたいのですが、あれはどうも……」

「やるべき事はやったほうがいいのです」津田はこう云って微笑した。

「――尤もいずれ江戸へお帰りになるということなら、求めて敵をつくることもないでしょうが」

「私は江戸へは帰りません」

玄一郎はこういって微笑を返した。津田は静かな眼でこちらを見た。温情のこもった、包むようなまなざしであった。

「しかし続きますかな」

「たやすいことではないと思いますが、ひとつ考えたことがあるのです」玄一郎は盃を下に置いた。「――こんなことを申上げるとお笑いなさるかもしれませんが、それはこの土地のひとを嫁に貰うことなんです」

「…………」

「ここでは婦人たちのちからがたいへん大きい、話には聞いていましたが、実際に見てじつは驚いたのです、それで考えたのですが、この土地のひとと結婚すれば、姻籍関係もできるし、またその妻のちからもいろいろの面で役立つ