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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

八

そして穏やかにこうつけ加えた。

「しかし事務はきちんと片づいています、その点はみんなよくやっていますから安心を願います」

梶井外記は顔を赤くし、若いれんちゅうのほうへ振返ってどなりつけた。

「おまえたちは国許の名聞を汚す気か、江戸の者に嗤われてもよいのか、われわれが田舎者とおとしめられるのはこんなざまを見せるからだ、少しは面目というものを考えろ」

八

その日の午後おそく、下城して和泉門を出ると、下僚の青年たちが七八人待っていて、柳の並木のところで、玄一郎を取巻いた。

「ちょっと聞きたいことがあるんです、そこまで来て貰いたいんですが」

「…………」

玄一郎は呼びかけた青年の顔だけを見た。

「ひまはとらせません、ついそこです」

玄一郎は黙って頷いた。かれらは四方から取巻いたまま、壕端を三の曲輪のほうへ向っていった。

左に松井矢倉がみえるところを右に折れると、鉄砲組屋敷がある、そこを通りぬけると白旗八幡の森へつき当った。かれらはその境内へはいっていったが、そこには益山郁之助と上原、三次の三人が待っていた。

「やあ御足労をかけましたなあ」

益山が笑いながら、ずかずか歩み寄って来た。