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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

九

な強がりが出て、……歯をくいしめるような気持で、やはり冷たいよそよそしいそぶりになってしまいますの、自分で情けないくやしいと思いながら、どうしても……」

松尾は抑えきれなくなったように、袂で面を掩いながら噎びあげた。

九

この告白は玄一郎には意外だった。いろいろの場合が眼にうかんだ。令嬢たちの招宴は四回あったが、四回とも松尾が主人役であり、そのときどきの趣向も彼女の采配であった。

――初めて会ったときからひそかに慕っていたという。

それがもし事実なら、馬鹿囃しの笛を吹いたり、藩主のお声がかりで求婚したりしたことは、松尾のような気性の者には屈辱だったに違いない。こちらはただ心驕った娘で、自分などの手では簡単にはいかないと思ったのであるが。

「よくわかった、もういい、寒いからここへはいらないか」

玄一郎はこう云って手を伸ばした。

松尾はふっと身を縮めた、本能的な羞恥であろう、だがすぐにすり寄って来て、その手を握りながらこちらを見あげた。

「かんにんして下さいますの」

「堪忍もなにもない、私も悪かったんだ」

彼がひき寄せると、松尾はなえたような身ぶりで、重く彼の腕に抱かれた。